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前置き
特に無し
経緯
今回は珍しく経緯を書いていこうと思います。
と言うのも、こちらの作品、私にとってはかなり珍しいです。
何がかと言うと、まず本作ですが、率直に言ってプレイしている人はめちゃくちゃ少数でしょう。少なくとも私自信、実際にプレイするまで耳にしたことはありません。ではどうやってプレイするに至ったのかという話になるわけですが、そこがこれから書いていく経緯ということです。
私はSNSをやっていませんし、かと言って特別情報網も無く、例えばエロゲやその他ノベルゲームに関する情報を積極的に仕入れようともしていません。
まあそれでもこのネット社会ですから、割かし話題の作品なんかは自然と耳に入ってくるという事はあります。例えば直近で言うと、「めっちゃカメレオン」でしたか。あのゲームなんかは自然と知っていますし、ことシナリオ的観点で言うと「ミサイド」なんかはまあ少し前ですが、私の耳にも入ってきていました。
対して本作はどうかと言うと、上述した通り、全く聞いたこともなければ、まず間違いなく話題なんてことはありません。(レビューも一つもついていない)
となると、ますますどうして私のこの狭い情報の中で本作の存在を知り、そして更に、そのような完全に未知でしかない作品をプレイしてみるという事になったのか。
これには主に二つの理由がありました。
まず一つ目。
先程私は「これといってエロゲやノベルゲーといったものにアンテナを張っていない」と話しましたが、これは厳密には少し違っています。
私の情報元は、たまに見聞きするという受動的な行為と別に、不定期的に最近発売された作品を調べることがあります。これは本当に気まぐれでしかなく、だいたい一年に2、3回ぐらいです。
そのサイトはもちろん批評空間で、過去にとある作品を巡ってこのサイトの評価は当てにならないと私はキレちらかしていましたが、そういった評価というものを抜きにしてもこのサイトは相当に便利だと思います。
昔は私は主にその評価目的だけで利用していた(と言うよりそれ以外の用途を理解していなかった)のであまりありがたみを感じることはなかったのですが、エロゲというものをやればやる程にこのサイトがあってくれて良かったと思わされます。私がこうしてエロゲをプレイしているのも批評空間というサイトありきだと言っても過言では無いほどにこのサイトの存在は大きく、何より便利なものです。それは特に私が、情報網を持っていないからというのもあるとは思いますが。
と、少し話が逸れましたが、そんな数ある用途の一つとして、このサイトでは最近発売した作品について見ることができるんですよね。しかもそれをデータ数順だったり、点数順だったりして見ることができます。
もっとも、知っての通りエロゲは年数が増すほどに作品数が減少しており、2010年頃のデータ何かと見比べて貰えばあまりの差にもはや笑えないほどです。
逆にその頃との違いとしては、最近は同人作品の登録が増えているようには感じます。
ただこれも、探す上ではフィルターで分けられるので、あまり苦労はしません。と言うかそもそもそれを含めても作品数はかつてと比較すると限りなく少ないですから、全作品を軽く見ていくことに大した時間は要しません。
はい。分かります。
説明がいちいちくどいですね。
まあ要するに、私がこの不定期的にやる作業をする中で本作を見つけた。そういう話です。
ただこれだけではやはり、プレイしようなんて考えには微塵もなりませんでした。なぜならデータ数0でしたから。
例えばこれが発売当日というのなら分かります。が、本作は3月末頃に発売されており、私が批評空間で見たのは最近です。
発売から2ヶ月近く経っていて、データ数0。これははっきりいって興味が湧かないのが普通だと思います。
所詮私も俗物ですから、なかなか自分がファーストペンギンになりたいとは思えない。それに、そういった言わば無名の作品をプレイするよりもいくらでもまだプレイしていない有名作品かあるわけですから、まずそちらからやるべきだという考えもあります。
つまり、そこに回す余力がないんですよね。
それでも結果として私は本作をプレイしたわけです。
それはなぜか。
そこで二つ目の理由の話になってくるわけです。
私には本当に数少ない友人がいて、その中で唯一エロゲの話をする友人がいます。
まあ端的に言うと、その友人がプレイしていたからです。
Steamの機能として、友人のゲーム通知ってくると思うんですが、それです。私が別のゲームをプレイしていた時に通知が来た。そしてそれが本作だったわけです。
正直この機能要るのかという疑問はありますが、ともあれ、私はそのタイトルを見た時に「何か見覚えがあるな」と思って改めて調べたら批評空間で見たものでした。
ただ、私は本作について友人にその感想だったりというのは聞きませんでした。
もちろん、私の性格上、可能な限り事前情報を仕入れたくないというのはあるんですが、ともあれ流石にここまで完全に面白いのかすら分からない作品ともなると、話は変わってきます。
ただそれでも聞かなかったのは一重にある可能性を考えているからです。
それは「その友人が作者に当たるのではないか」ということです。
その友人と言うのは、エロゲよりは全年齢作品に興味があるタイプで、steamにあるストーリー系の作品はまあまあやっていると思います。(完全には把握していませんが)
なのでまあ、俗に言うスコッパー(眠っている名作を探そうとする人たち)の精神でプレイしたとしてもおかしくないと言えなくはないです。
ただ。それにしてもです。
さすがにレビューすらついていない作品をプレイすることがあるのかというと、それはそれで疑問ではあります。
かと言って、その作品を作ったというのもあまり現実味を帯びているとも思えない。
その友人は普通に働いていますし、それなりには忙しそうではあります。その中で密かに製作をしていた、というのは私の立場からするとあまり納得はし難い。
もっとも、私もその人の全てを知っているなんてことは全くありませんから、実は、ということもあるのかもしれません。
まあ色々考えはしましたが、結論として私の中では、ほんの気まぐれで買ってみたというのが一番現実的なんじゃないかなあと思っています。
すみません。
かなり個人的な話になりました。
まあ結局その辺りの真偽は分かりませんし、私としては何となく、そこをハッキリさせたくないという想いもあります。
この記事を読んでいる方に一つ勘違いして欲しくないのは、その人が作ったかもしれないから少しでも広めたいなんて気は毛頭無いということです。
そもそもこの私の話自体、単なる仮定でしかありませんし、それに他の記事を見て貰えれば分かりますが、作品への評価や感想記事で、何かに配慮したことなんて一度もありません。
面白くなければ面白くなかったと書きますし、逆に良かったと感じたらそれを掘り下げる。
もちろん、そういった感想を書くに当たって、可能な限りその作品に向き合ってはいるつもりです。私自身、ろくにプレイもせず適当に批評するような存在は絶対に許し難いと考えているので。
度々言っていますが、作品に対して自分が感じたものを残すという行為は消費者の権利であると同時に義務だと私は考えています。
それは自分の為でもありますし、その作品のことを思うなら、その作品へのリスペクトを示すのであればすべき行為だと考えています。
まあそれらしいことを言ってますが、要は自分の考えと違うことを書くようなことはしない、というだけの話です。
と、まあ経緯としてはそんな感じです。
そして実際に販売ページに行って、概要を読んでいくと、思いの外、これは期待している物があるのではないかと考えそしてプレイするに至りました。
何か経緯でここまで長くなったのも珍しいですね。もっとも、7割ぐらいは余談ですが。
さて、そんなわけで本題に入ります。
※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。
本題
というわけで本題、といきたいところなんですが、少し余談から入らせてください。
私はこれまで全年齢エロゲを記事にしたことは何度かあります。
全年齢エロゲとかいう矛盾しかないワードについては、何となく雰囲気で分かってもらえるとありがたいんですが、あくまで私の感覚としては、
エロゲを作っている会社が全年齢向けに出した作品
という定義です。
つまり少し前に記事にした「key」の「summer pockets」なんかがこれに該当します。(もっともkeyはかなり前から全年齢しか出していませんが)
つまり、シンプルな全年齢作品、とりわけdmmで販売されておらず、steamのみで販売しているような作品はプレイしても記事にはしてこなかったんですよね。
ただこれは、何らかのポリシーがあってのことというわけではなく、単に書くほどのものがあると思えなかったり、記事にする上で何を書けばいいか思いつかなかったからでした。
分かりやすい例でも無いかもしれませんが、個人的に記事にしなかったものとして一つ浮かぶのが「needy girl over dose」です。そういう、プレイはしたが記事にはしていないというのはちょいちょいあります。
まあ、そもそもエロゲというものにしかあまり興味が無いというのも事実ではあります。
それにしても、まさかsteamの作品ではじめに記事にする作品が有名作品ではなく、限りなく無名と思われる本作になるとは思いませんでしたが。
余談はこのあたりで。
本当に本題です。
まず率直に言いますが、めちゃくちゃ良かったと思います。
大前提、私の期待値の低さというのはもちろんあったんですが、それでも私が求めるものは十分、いえ十二分にありました。
商業作品が丸い形をしているのに対して、インディー作品というのは鋭利な形をしているとでも言いましょうか。
インディーらしさと表現すればいいのか分かりませんが、商業作品には無いもの、それを感じさせてくれるのがインディーの長所なんじゃないかなと私は考えていて、その観点において本作はあまりにも私の期待値を越えてくれました。
これは私がエロゲ、とりわけシナリオゲーに求めているものとも多少似通った部分ではあるのですが、端的に言うと「尖り」。それが確かにこの作品からは感じられました。
同時に私としては、本作は「エロゲをプレイしている人にこそ刺さる作品」なんじゃないかと思いました。厳密にはキャラゲーと言った方が正確ではありますが。
少なくとも私は、あまりキャラゲーに触れていない人が本作をプレイして感じ取るものと、沢山プレイしている人が感じ取るものでは大きく差があると思います。
と言うのも、本作でゲーム内に閉じ込められる、いえ、違いますね。強制的に進行不能にされるというほうが正確ですか。
この原因というのは、プレイヤーの選択、と言うよりはキャラゲーというもののもつ構造によるものです。
要するに、恋二が我々プレイヤーを進行不能にした理由は「全員を攻略したから」なわけです。
しかしこれは我々プレイヤーからすると至って普通の行為でもあります。中には自分の好きなキャラのルートだけをやるというプレイヤーもいますが、多くは全ルートをプレイします。そしてそのことに疑問を抱くことはない。
しかし、その世界の人間がそれを知ってしまったらどうでしょう。
恋二はゲームのバグによって他ルートの記憶を持ってしまいました。本来、我々プレイヤーしか持ちえないはずのものを。
つまり、我々が1人のヒロインのルートをプレイした後に、他ヒロインのルートをプレイしていることを。伊波、双葉、桃音という三人を攻略しようとしていることを。
端的に言えばメタフィクション。過去にもこういった作品はいくつもありました。
しかし、本作におけるそれは確かに筋が通っていると感じるんですよね。
そして、そんなプレイヤーという存在は、更にバグを引き起こし、存在しない橙香ルートに進もうとしている。自分の親友が穢されようとしている。
我々からすればそんなつもりはありません。しかし恋二からすれば、その世界の人間からすれば、これはどれだけ傲慢で恐ろしいことでしょうか。
私自信、橙香ルートに派生した時にはワクワク感こそあれど、それが咎められる行為だとは思ってもいませんでした。その派生するという構成に感心こそしていましたが。
そして、だからこそ恋二は止めたわけです。自分がどれだけ悪になろうとも。
強制的にゲームを進行不可能にすることで、結ばれる未来に到達させないようにしたわけです。それしか親友を守る手段がなかったからです。
だから主人公の視点を通してゲームに関与する我々を止めるために主人公を拘束し、閉じ込め、我々をゲームから追い出そうとした。
行為としては至極真っ当なものではあります。
くわえて、恋二について良かったと感じたのは、あまり同情を誘うようにはしていなかったことです。
こういった立ち位置、安い作品であれば我々プレイヤーの同情を誘うような振る舞いをしがちだと思います。対して恋二という人物は徹底的に悪でした。と言うよりも悪でいようとしたというべきでしょうかね。
まあ終盤はそうでもありせんでしたが、それも納得のできるものだとは思いました。つまり我々プレイヤーの行動を見て、親友を守るべき敵ではないことを理解したから協力的になったと。
そうしてそんな恋二だからこそ最後の選択に意味が出てくるわけです。
最後。
プレイヤーは選択を求められます。
それは橙香を選ぶのか、恋二を選ぶのか。
これは普通に考えれば橙香を選ぶしかありません。何故なら我々がずっと恋二からの苦痛にも耐えて、主人公を修復して、ようやく掴み取ったわけですから。
しかし、恋二も悩むことができる。なぜなら恋二の行為に納得できるものはあったし、最終版には恋二はプレイヤーの為に手を貸してくれたわけです。その結果、自分が消えると知っていながら。
そんな悪であろうとしながらも、確かに優しく、誰よりも人間味の溢れるキャラクターである恋二との二択。
だからこそ迷うことができる。痛みを伴うことができるわけです。
久しぶりにこれは痺れましたね。過去、この二択で迷った経験はありましたが、それを思い出しました。
本作はとにかく、こういった選択の重さみたいなものを重視しているように感じました。
とりわけ恋二に監禁されてからはまさにそれで、選択することに一つ一つ慎重に考える必要があったんですよね。
なぜならセーブもロードも使えないからです。だからやり直しが効かない。失敗したらどうなるか分からない。
故に一つ一つを真剣に考える必要性が出てくるわけです。
その事は本当に私自身、プレイする中で度々思いました。
私がエロゲをプレイしている人に刺さる、と言ったのはこういった部分もあります。
続いてシナリオについて、と言いたいところですが、正直、ストーリーについてはそれほど触れるべきところは多くはなかったかなと思います。
まず前半と言いますか、橙香ルート前については、共通から少しずつ派生して行って、各ヒロインと結ばれる。
そのヒロインとの個別パートというのも正直かなり薄く、よく言えばテンポが良い、悪く言えば淡白。そんな感じになるでしょうか。
ただ本作に関して、全体をプレイした上で考えるとこの程度の薄さで良かったようにも思えます。
というのも、言ってみれば本作においてこの三人のルートというのは主軸では全くないわけです。
むしろこれを前提としてその先の展開にこそ意味があるわけで、そう考えるとむしろ限りなく妥当な尺でもあったとも言えます。ただ、まあ私としてはその後の展開を考えてももう少し三人のルートが濃くても良かったとは思いますが。
その後の展開と言うのは、主人公の修復過程のことで、橙香を選ぶために三人を振る選択をするわけですが、そこの苦しさですよね。
この選択は、三人への想い入れが強ければ強いほどに大きな痛みを伴うわけです。
が、本作の場合、この三人への想い入れが強くなるほどのものは描かれておらず、ゆえにこそ、この選択には痛みと言えるほどのものはない。
まあとは言え、構造としてはよくできていたとは思います。
この三人を振るくだりもそうですし、その前のそれぞれとの記憶を取り戻すことに関してもそうですが、これらによって、作品的な価値が確かに存在しているんですよね。
と言うのも、端的に言うと本作において橙香ルート前と言うのは導入にも近いものであり、立ち位置としてはおまけというほど薄くはないにせよ、主軸というものでもないわけです。
ある意味で前座的な立ち位置なわけですが、そこにもきちんと作品的価値を生んでいる。あるいは元々そういったつもりだったのかもしれませんが、少なくとも結果として確かに必要な存在としていること、これは構造としては優れたものだとは思いました。
はい。シナリオについては触れておきたいのは割とこんなぐらいです。
あとはまあ、一応三者三葉な結ばれ方だったと言いますか。割とキスして終わりってとこはまあ王道な感じでそこに関しては全員同じなんですが、二人の関係性という部分については差別化できていたと思いました。
エンド後のアフターストーリー的なものもそうですが、きちんとその二人らしさ、みたいなものはあったのかな、と。
まあ上述した通り、結ばれるまでの尺の短さもあるのであくまで強いていえばぐらいのものですが。
あとはそうですね。
全体的にですが、普通に見ていて退屈はしないシナリオだったと思います。
これは割と上から目線なニュアンスを含んでいるように感じるかもしれませんが、純粋に褒め言葉です。
まず橙香ルート前についてですが、
突然学校の施策として部活動を作るように言われる主人公。
何とかして双葉、伊波、桃音と部活を結成。
部活動をしていく中で、少しずつ恋心が芽生え、結ばれる。
こんな話です。
至って普通、至ってありがちなんですが、それでいいと言いますか。
無難なことが良いというか。綺麗にまとまっているとは思います。少なくとも私は退屈せずにプレイできました。
そして橙香ルート後。
ここについても、まあ王道だとは思います。
親友だった二人が、橙香の秘密を知ったことから少しずつ距離が近づいていき、好きになる。
しかしその想いが通じ合うことはなく、主人公が想いを伝える前に橙香は緊急搬送。
医者からはもってあと数日と言われ、主人公は想いを伝えられなかったことを悔やみ続ける。
そんな中、一通のメッセージが。恐る恐る確認するとそれは橙香からのメッセージで、主人公の願いが通じた結果か、橙香は奇跡的に目を覚ましていた。
そして結ばれる……とはならずに恋二に刺されて監禁されるわけですが、ここもまあ十分に妥当なシナリオだったと思います。主人公と橙香の過去、主人公の家族との過去等、王道ではあるんですが、決して安いと切り捨てられるものでもなく、良いか悪いかでいうと間違いなく良いとは思います。
ただやはり、あくまで無難。あくまで予想の範疇ではあるというのが手放しには褒められるものでは無い。
まあいずれにせよ、下手に面倒くさくせずに、分かりやすくそれでいて退屈しないシナリオだったというのは十分に評価に値すると思います。
あとはゲーム性という話でしょうね。
私は本作の魅力は、シナリオではなくそのゲーム性、と言うよりもゲーム体験にあると考えています。これは実際にプレイしなければおそらく分からないとは思いますが、実際、そこを重視していると思える箇所はいくつもありました。
まずは全体的に見られる選択肢の多さです。しかもその選択肢というのが基本的に、
選択肢 → 選択肢
という構造で、つまり全パターンを網羅すれば当然いつかは正解は引けるわけですが、そうするのはあまり得策ではない。
ではどうするか、と言うとこれはシンプルで基本的に全ての選択肢は単なる運ゲーではなく、明確に正解が用意されています。
つまり、我々がすべきなのはただしらみ潰しをしていくのではなく、ある答えを探すことなわけです。
これについては正直賛否両論あると思います。
ただ私としてはこれは大きく賛同です。
過去に私は、意味のない選択肢はもはや用意しなくていいのではないか、という話をしました。実際今もそう思っていて、特に多くのキャラゲーなんかはもう選択肢なんて一つもなくて良いようにさえ思います。
本作に関して言うと、意味の無い選択肢ではなく、まあ端的に言うとゲーム性の伴った選択肢なわけです。
そしてこれは実際、構造としては確実に面倒で、複雑にするということはそれだけ、その選択をした先のものを不要であるにも関わらず用意する必要があるわけです。
つまり本作はそういった、言ってしまえば無駄になることに努力をしている、手を抜いていないわけです。
私はそこを評価したいと思いますし、何よりゲーム性のある選択肢であったため、長所だと感じました。
そしてゲーム体験というところで言うと、何よりも監禁された後の部分に関しては触れないわけにはいかないでしょう。
上述した通り、ここの部分に関しては選択するという行為全てに緊張感が伴います。
これはセーブもロードもできないというのもありますし、我々は途中から全ての行為を禁止されます。全て、本当に全てです。
テキストすらも自動で進行していき、できるのはただ恋二の目的であるゲームをやめることだけ。
そんな中で、圧倒的に主導権を握られているからこそこの選択一つ一つを大事にしなければならないという意識を自然と植え付けられるわけです。
抜け出すまでもそうですし抜け出したあとも、絶対に間違えられないという緊張感と時間制限の中(多分)で答える緊迫した雰囲気。
結果としてどちらにせよ手の上で踊らされていただけだったわけですが、この体験というのは本作の中でしか味わえないものがあると思います。
そして、今少し触れましたが、「こうしたらどうなるんだろう」という選択は徹底的に許されていない。これもまた選択の重さに直結していたと思います。
例えば先程の抜け出した後もそうですが、時間制限があったのかは分かりません。なぜならそれを確認することはできないからです。と言うよりも確認することが怖いという方が正確かもしれません。
ADVゲームをやってきた人間であればあるほどに、まずは間違えていそうな選択から潰していきたいと考えるのが自然だと私は思います。少なくとも、私はそういう考えではあります。
ただ本作においてそれはできないんですよね。なぜなら主導権は我々にはなく、失敗したらそこからやり直し、なんて救済措置があるとは思えないからです。
これを失敗したらどうなるのか、という興味はあれど、それを実行することはできない。
その最たる例が、復元する前のシステムに入力する部分ですよね。
この部分は、私も何度も何度も確認して慎重に入力したと思います。
……と言うか、ホントよく出来てますよね。書いていて感心が尽きません。
キャラの名前も元々こういうつもりでつけていたんですかね。だとすれば率直にすげえなって感じです。
この監禁された後の体験については、正直言葉にするのは難しいと言うか、百聞は一見にしかず過ぎると言うか。
とにかく私は、素晴らしい体験をさせて貰えたと思いますし、これはおそらく本作でしか味わえないものだと感じました。
あとは気になった点をいくつか挙げて終わろうと思います。
と言ってもさほど多くはないですが、まず何よりも思ったのは、この監禁された後です。
もしゲームを終了した場合どうなるのか。ここは気になりましたね。
私は一気に最後まで進めたので問題はありませんでしたが、少しずつプレイする場合、一生最初からやり直し続けるんでしょうか。あるいは裏でオートセーブでもされていればいいんですが……怖くて試す気にはなりませんでした。
続いて、システム的な部分ですが、スキップ進行でちょいちょい怪しい挙動があることや、基本的にクリック進行が推奨されている(添付のテキストファイルに書いていた)こと。ここはストレスではありましたね。
まあ本作はボイスがあるわけではないので、どっちにしろオートよりはクリックで進めていたとは思いますが。
あとはまあ、途中で投げられるかもしれないなあというのはちょっと感じましたかね。
私は今回、作品ページを見て(普通のキャラゲーではなさそうという事が仄めかされていたので)何かあると信じてプレイしましたが、少なくともこの動画ルート前の部分については、言ってしまえば普通のその辺にある作品でしかありません。
なので特にそういったものも見ずにフラッと買った人からすれば「なんか普通だったなあ」で投げる事もあり得ると思います。
まあただ、普通のキャラゲーという前提があるからこそその後の展開に引き込まれるわけで、そういった意味ではなかなかこの辺りは難しいとは思います。
そうですね。正直気になったのはこれぐらいでした。
あとは、とにかく手をかけて作っていると思います。それはもちろんシナリオ、というよりゲーム体験的なところもそうですが、その他要素についてもそうです。
キャラクターの立ち絵枚数、差分、各キャラに専用のEDもあったことや、BGMも同じものの使い回しではなく、むしろ多すぎるぐらいだったと思います。
特にキャラクターの立ち絵の部分に関して言うと、1テキスト内で複数回表情変化があったり、動きがあったりと、これ普通に商業のエロゲでもやっているところはほとんどありません。
もちろんこの尺だからこそできたことなのかもしれませんが、にしてもこれはおそらくめちゃくちゃ労力を使ったと思います。
EDに関しても、そもそもこういったインディーゲームであればなくてもおかしくないと思います。
恋二に刺されてからのopという流れなんかはめちゃくちゃワクワクさせられましたし、とにかく手を抜いているとは思えない。
ありとあらゆる部分に妥協が全く感じられないんですよね。
ゲーム体験も素晴らしいものがあり、外枠についても手を抜いていない。完成度も高い。
しかしおそらく認知されていない。
定期的に言っていますが、評価されるべき作品が評価されず、その逆が不当に評価されるというのは是正されるべきだと思います。だからこそ過剰に評価されているものにはあーだこーだ言いたくなるんですよね。
まあとは言え、世の中そういった作品は私が知らないだけで無限にあるんだと思います。私は今回本当に偶然と気まぐれの結果として本作をプレイすることになりましたが、きっとこういう作品はいくらでもあります。
ただやっぱり、そんな作品を探すのは途方もないことです。何よりそれが良いのか悪いのかすら分からない中でプレイすることはあまりにも時間的にも経済的にもリスクが高いです。私が時間とお金が無限にあればそういったことに時間を割けるかもしれませんが、現実問題そんなこともないわけで。
それならば名の知れた、評価されている作品をまずはプレイしたいと考えてしまいます。
要するに私の正義感なんてものは所詮薄っぺらなものでしかないんですよね。ただそれでも、少しでも名作が日の目を浴びて欲しいとは思いますし、そうであるべきだとも思います。
なので、今後もしまた、こういった作品に出会うことがあればその時は是非とも記事にしたいと思います。そしてもしこの記事を呼んでいるあなたが、そういった作品に出会うことがあれば、是非何らかの形で発信してほしいと思います。それがどれだけ小規模であろうと必ず意味はあります。
作品というのはたとえどれほどの名作であろうと、誰かに、世の中に認知されなければそれは存在していないものと同じです。認知されるからこそ批評ができる。まあ当然の話ではあります。
これだけ世の中に作品が溢れているわけですから、日の目を浴びるものもあれば浴びないものもある。むしろそういった作品の上に立ってはじめてそこが陽のあたる場所となる。
つまり、全てが陽のあたる場所にいることなんて不可能なわけです。それでも、いえ、だからこそ、自分が触れた作品、それが名作だと感じたのならば尚更、その作品に感じたものを形にしたいと思いますし、してほしいと思います。
まあ色々言いましたが、前述した通り私の正義感なんてものは本当に(笑)というのが相応しく、そもそも正義感という言葉を用いること自体が傲慢なものだとは思います。
その上で、それでも一つ言えることは、今回こうして本作をプレイできて良かった。素晴らしい体験をありがとうございました。以上です。
まとめ
想定の遥か上を行くクオリティで、ゲーム体験としてはこの水準のものは中々ないレベルだと思いました。間違いなく名作だと思います。
インディーゲームらしさを感じられるものでありつつ、各種要素についても妥協がなく、総じて完成度の高い作品でした。もちろん、技術的な拙さみたいなものはありましたが、それを補ってなお余りあるぐらいには素晴らしい作品だったと思います。
まさかここまでのものに出会えるとは思っていなかったので、割と驚きが強いです。
こういうインディーゲームがどんどん見つかるようになって欲しいものですね。
ちょっとしたアレコレ
- Only youってそういう
- 科目問題ガチ過ぎない?
- EDにQRコードはじめて見た
- 最後は橙香選びました