徒然防備録(エロゲ、アニメ評価感想その他諸々)

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最高の演出の裏にある、底なしの失望。【凍京NECRO】感想


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さて、先ほど解説()記事を書いてみましたが、次は感想記事です。

解説記事はコチラ。

たまには有益なことをしてみる。【凍京NECRO】TRUE END 解説、考察、疑問点等 - 徒然防備録(エロゲ、アニメ評価感想その他諸々)

 

と言ってもそんな書きたいことがないので多分すぐ終わります。

※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

さて本題。

まあ何と言っても演出の凄さですよね。

まさか3DCGをここまでふんだんに盛り込んでくるとは思いもしませんでした。よくある、『体験版部分だけは凄い感じにしといてどうせそれ以降はサボるんでしょ』と思ったらまさかの最初から最後まで戦闘シーンの大半が3DCGによるアニメーションだとは思いもしませんでした。これはまあ多分大抵の人が言ってることでしょうし、スタッフの方も言っていましたが、あえて言わせて貰います。紙芝居からの脱却。

エロゲ、と言うかノベルゲーム全般に言えることであり抱える問題。それは何か。ノベルゲーはその構成上、テキストボックス、背景と立ち絵、そして部分的にCGという画面の作りからほとんどの場合脱却できません。

そのための工夫として、表情差分を多くしたり、ちょっとしたエフェクトを駆使して動きをつけたり、といった工夫がされているわけですが、ともかく根底としてその部分は変わりません。そしてそれを揶揄してよく言われるのが『紙芝居』という表現です。揶揄と言ってもこれは実際かなり的確な表現で、それに5000円程度、高ければ10000円も払えなんて言うんですからまあひどい商売ですよ。売れないのも納得です。

それでも私は払う価値があると信じています。それはこのエロゲというものにしかない『何か』を求めているからで中にはそれを感じられる作品も……と、まあそんなくだらない話は趣旨から逸れすぎるんで控えます。

要するに、どれだけの名作と言えど、この紙芝居でない作品はほとんど存在しないわけです。

なぜか。極めて困難だからです。当然ですよね。じゃあどうすれば紙芝居じゃなくなるかって考えると、動きをつけるというのが浮かびます。その『動き』の極地とは何でしょうか。それは言わずもがな『アニメーション』でしょう。アニメーションをつけろってそりゃ無理も無理でしょう。普通は

普通じゃないんでやっちゃってますね、戦闘シーンのアニメーションを。と言っても、美麗だとか世のアニメに勝る、なんてことは間違ってもありません。でも、それは全くもって重要じゃないんです。重要なのはその心意気であり、そのチャレンジ精神であり、そして結果としての画面の退屈さからの脱却です。

そして一見して、戦闘シーンに着目されがちですが、個人的に凄いと思ったのは(そこはもちろんのこととして)背景です。いえ背景と言うのは適切では無いかもしれません。

例えば、光の明滅、そして雪のアニメーション、と背景もとてもよく凝っていました。が、それは一部であり、

例えば、街中なら街の喧騒のBGV(バックグラウンドボイス)や、雪の上を歩くなら雪を踏みしめるリアルな音、海なら波の音、そして会話中でも何かが起きたならその効果音の差し込みがありました。

まるで追体験しているかのようなリアリティの追求。ちょっと疲れてあんまり言語化できないのが申し訳ないですが、こういった演出面の工夫がこれでもかと詰め込まれていました。

とにかくこれはこの世の全ての作品を凌駕すると思います。比肩するものがないレベルに突き抜けていると思いました。これは、作品に真剣に取り組み、クオリティの向上を意識しなければなし得ないでしょう。

そしてそれに付随するシステム面。こちらも相当に作り込まれていたと思います。

近未来感の演出にこういう地味な部分はそれほど影響は大きくないかもしれません。が、確かに影響はあるわけで、そこの妥協しなさというかプロの仕事感ですよね、素晴らしいと思います。

ですが、まあ『割と不便だな』と思う点もありますね。

まず起動ですが、いちいち『search』を選択してセーブデータを読み込んで……という作業があり、しかもそれがまあまあ時間がかかる。私は付けっぱなしでやっていたのでほぼ気になりませんでしたが、普通にゲームを閉じて、開いて、というのを考えるとまあ億劫で仕方がないでしょう。

続いてセーブやロードの面ですね。まずセーブまでの時間が長い、そして操作が分かりづらい上に説明もない。これは如何なものでしょうね。私もクイックロードする時は苦労しました。

まあ確かに凄いんですが、『もう少しユーザビリティ考えた方が良いのかな』と一消費者として思いましたね。テストしたとは思えません。

 

 

さて、まあ良かったところもそこそこに、シナリオ面ですが、まあ惨いですね。見てられません。

本ブランドの『装甲悪鬼村正』が異次元に良かっただけに落差はまさに天と地でした。

しかもそれが私の大好きな『君と彼女と彼女の恋。』のシナリオの方(下倉バイオさん)ということで、それはそれはショックでした。目眩がしましたね。それほどまでにひどいです。

まず世界観がイマイチ飲み込めないですし、用語が異様に多いです。『装甲悪鬼村正 』の時も書きましたが、用語というのは見る側にとってストレスです。でもそのストレスの代わりに手に入るのが没入感です。上手くいかせればその用語という面倒なものは、我々をよりその世界に没入させるものになりますが、一方でそれを活かせず、ただ淡々と用語の列挙をする作品にはストレスだけが残り、没入感は全く感じられません。そして本作がそのどちら側と言うのはもはや語るまでもないでしょう。

そんな不明瞭な世界観を更に増大させたのが敵と味方でしょう。

そもそも出来事の全てが凍京で完結し過ぎです。最強にも近いミルグラムという存在、そしてそれとかつて戦った男の息子がいる、まあそれはいいです。そして敵を討つ、まあそれもいいです。が、理由が浅すぎる。なぜそんなここに固執するんですか。世界は広いですよね、そしてミルグラムは別段日本人でもなければここに思い入れがあるわけでもない。なのにずっとここにいる。それはあまりにも世界が狭すぎませんか?

そうするならもっと緻密な、そしてハッキリとした理由付けがなされるべきでしょう。ミルグラムにも理由があるのは理解しています。が、軽すぎるんですよ、全て。不愉快です。

まあこれは敵側の話で、味方側も軽いですよね。もう軽すぎていちいち言葉が出てきません。敵と当たり前のように共闘したり、簡単に友や家族を殺したり、と色々ありましたが、取り挙げる気にもなりません。ここまで文句を言う気にもならないのは久しぶりです。これはあくまで予想で意見ですが、そういうのを掘り下げることを面倒くさがりましたよね。そういう姿勢がそもそも気に食わないです。

 

そんな、キャラクターという所でどうしても一点だけ触れておかなければならないのがイリアの存在です。

イリア、メインヒロインであり最重要人物です。端的に言いましょう。ウザイです。

何がウザイか、薄っぺらい正義感で偽善者ぶるところが、何の役にも立たない癖に偉そうなところが、わがままなところが、いつも助けられる側なことが。

これはもう同情します。イリアをこんなキャラクターにしたのは貴方です。貴方のシナリオです。可哀想でしかありません。

故にこそ、イリアを助けるトゥルーエンドに何の感慨も抱けない。どうでもいいんです。

これは単にキャラクターの問題でもなく、もっと他のエンドでイリアと悲しい別れをするとか、イリアをどうしても救えないという苦しみをプレイヤーに味わわせるべきでしょう。そうして、どうしても手に入らない、どうしても救えないとなってはじめてあのエンドに価値があるんです。喉も乾いてない人間に2Lの水を渡しても単なる迷惑でしょう。乾いているから水が欲しい、乾ききっているから欲するんです。そんな当たり前の心理も何一つ理解されていないようですね。本当に残念です。

 

さて、というわけでトゥルーエンドについてです。

私も別の記事で考察じみたことをしましたが、まあ感心はしました。なるほど、と。でも拍手はできません。なぜならそれが世界をひっくり返すようなものでもなければ、特大の伏線回収があったわけでもない(強いて言えば冒頭の映像ぐらい)。ただ『そうですか』というぐらい。そんなもんでしかない。別にあっても無くてもこの作品の見方が変わることはまあ無いでしょう。そんな程度のものです。本当にただのおまけぐらいの価値です。

個人的には自己満でやっているのを見ていただけという感じが強かったですね。過去の回想と言い、イリアを救う展開と言い。その辺のキャラゲーですか?

その上、見過ごせない疑問点もいくつもありますし、それは多分解消されることは期待できない。なんせこのボロボロ具合ですから。考えられていると期待できないし、仮にあったところでおそらく納得できる理由は用意されていないだろうというのが本音です。

 

それと、割と珍しい複数視点の採用ですが、こんな風にしかできないんならやめた方がいいです。テンポが悪くなるし、内容が重複することも多々ありましたから。はっきり言ってただ見づらいだけです。何回かイライラしました。

 

さて、まあこんな所ですかね。

最後に。

この作品を作っているのが『ニトロプラス』で無ければここまで言っていなかったと思います。本当に話にならないシナリオというわけでは無いです。割と下の方のひどさではありますが。その辺のブランドの作品でこれだったらまあ、ここまでは言っていなかったかもしれません。まあでも……やっぱひどいわ。

 

あとは評価記事書いて永眠ですね。それでは。