徒然防備録(エロゲ、アニメ評価感想その他諸々)

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拭えない現実とのギャップ【君が愛したひとりの僕へ】&【僕が愛したすべての君へ】雑感

前書き

こんにちは。

今回は2022年に公開されましたアニメ映画「君愛」と「僕愛」についての感想記事になります。


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経緯

経緯としましては、まあ「すずめの戸締まり」です。(あまりにも適当)

補足すると、つい先日、金曜だか土曜だかのロードショーで「すずめの戸締まり」の地上波初放送がされていました。これについての感想記事は書こうかなーと思って(結局今に至って)いるわけですが、ともかくこの作品の公開年と言うのが2022年だったんですね。それで『じゃあ2022年のアニメ映画でいちばん良かったのってこれということでおk?』という議論が、私の中か地球のどこかであったわけです。それで2022年のアニメ映画をバーッと振り返った際に見つけたのが本作だったという感じです。

私は普段アニメ映画というものをあまり見ないタイプの人種ではあるんですが、そんな私が本作に惹かれた点としてはまず明確にそのキャッチコピーです。

この作品、タイトル等から察していると思いますが、簡単に言いますと2作で1作系なんです。と言ってもあんまりそんな括りもありませんが、まあ分かりやすいのだと『前編と後編』とかそういうのをイメージすると思います。でも本作の場合その常識を覆してきていたんです。

つまりどういうキャッチコピーかと言うと、どちらから見るかで結末が大きく変わるというものでした。いるか分かりませんが、よく私のブログを読んでいるような(変わった)方には分かってもらえると思いますが、こんなのは私にとっては食いつきたくて仕方がないご馳走のようなものです。まあ要するに……とても気になりますよね。ただそこで私としても考えるのは、これが単なる虚言であるという可能性でした。と言うのも壮大なキャッチコピーをしている作品ほど世間との評価が乖離しているものは無いからです。これはアニメなんかでもよくありますが、めちゃくちゃ大袈裟な例として

『先の読めない怒涛の展開! 史上最高のミステリーがここにある──。』

とかいうものがあったとしたらイコールで、

『キャラクターとか世界観とかむちゃくちゃでとにかく訳の分からない展開が多数起きます。謎も到底読者目線で解決することは不可能ですので諦めてください。』 

と書いているようなものです。少し逸れましたが、まあその理論が当てはまるほどに壮大でできたらすげえなってことをキャッチコピーにしているのが本作なわけです。したがって、これは本当にご馳走なのか罠なのかという思考が必然的に発生するわけです。

まあその結果については、本文で書きましょう。

 

以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

本文

はい。まず結論としては罠ですねこれは。

上でも書いていますが、もう少しだけキャッチコピーの話をしたいと思います。このキャッチコピーに対して私が警戒した理由は

  1. 釣り餌ではないか(と言うより当人たちは自信満々だが世間的にはゴミというタイプの作品ではないか)
  2. 名作だとすればあまり聞かなかった(話題性に乏しかった)ような気がする

この2点でした。

1については先程説明した通りで、乖離しちゃってる完全自己満作品になっちゃってるパターンかどうかってことですね。

2については上では触れていませんが、そのまんまです。仮にこれだけすごいことを達成できているとすれば評価されていないにも程があるのではないか、ということです。

だって冷静に考えてくださいよ。

『どっちから見ても話は成立するのに結論は変わる』

そう言っているわけです。

このキャッチコピーから分かることとしてはパッと考えるだけでも以下の2つがあります。

①両者に前後関係(前提条件)は無いが、関連性はある

②例えば別視点で同じ出来事を描くような単調な話では無い(その場合異なる結論にはならない)

これができたらめちゃくちゃ凄くないですか? 少なくとも私はそんな作品があったら凄いと思って、1時間ぐらいはどっちから見るかを自分なりにあれこれ考えたと思います。

ただこのシステム自体について言うと、私のような人間は好みますが、基本的には受けないと思います。と言うのも新海誠作品やジブリ作品なんかを見ていれば分かりますが、そういう映画を見に来る客というのは多くの場合、普段そういったエンタメに触れることがない人です。全員が全員映画評論家だったりということは無いという話で、むしろそういった人はごく一部でしょう。

大衆にもある程度受けつつ評論家からも評価されなければならないと考えると、映画というのもなかなかに奥深くて難しい……という話はまあ一旦置いておいて、つまり言いたいことはそういう大衆に受けないのでは? ということです。この理由としては主に1点のみで、大衆の多くにとって思考する手間は不要だということです。つまり本作で言うとどちらから見るかを悩むことが好きな私のようなタイプであれば良いですが、別にそこまでこういったものに価値を感じていない人にとってはそのたった1ミリもあるかないかのハードルを嫌うと思うんです。『じゃあもういっか』ってなると思うんですね。仮にそうじゃないとしても殆どは『絶対に見る順番で失敗したくない』と思うでしょう。そうなると当然調べなければいけない。ここまで来ると面倒になる人はさらに増えるでしょう。ちなみに、実際に検索クエリ(検索時の予測候補)を見てもらえばこのことは明確です。

まあここについての掘り下げは程々にして、要するにこのキャッチコピーの時点で大衆好みではないと私は思いました。だからこそあまり話題になっていないという部分についてもある程度容認しました。そこで躓いて見ていないから必然的に話題にもならなかったのではないか、と。まして話題が話題を呼ぶ昨今では尚更に。

 

で、まあようやく中身の話に入るわけですが正直酷すぎて何から話せばいいのか分かりません。もしかしなくても私が見た中で割と群を抜いてやばかったと思います。

と言うのも、まあ色々、本当に色々ありますがまずクオリティの低さについては触れなくてはならないでしょう。

まずは声優の演技があまりにも下手すぎました。正直これで評価を下げている部分はまあそれなりに多いと思います。知る限りアニメ映画史上一番演技が下手だったと言ってもいいと思います。でこの下手なのが誰かということなんですが、まあ特に酷いのは主人公くんですよね。声優が下手なことは良いですよ。どうせどこかのタレントだかアイドルだかにやらせているのは明白ですしその手法は割とアニメ映画でよくあるやつですから。ただそれに対するディレクションに問題があります。話題性だかなんだか知りませんが文字通り本末転倒ですよこれじゃあ。何が起きたらこんなひどい演技でOKが出たのかまるで分かりません。出資しているどこぞの社長から自分の息子を出演させろとでも脅されたんでしょうか。それ以外でこのクオリティで世に出すのは正気とは思えません。まして本作の場合2作で1作なわけですから、通常のアニメ映画の2倍分はセリフを聞かされることになります。つまりストレスも2倍というわけですね、いやあすごいですね。大丈夫ですか?

 

次に、映画としての質の低さがありました。

これは言い換えるから演出とも言えるかもしれません。なんと言いますか、率直に言うと、世界という塗り絵の上に人物という紙人形が置かれているだけみたいでした。

一つ取り上げると、主人公がヒロインっぽい人とカラオケに行くシーンがありましたが、そこの場面切り替わりがコマなんですよね。自転車で走るコマ、カラオケ店に入るコマ、ヒロインっぽい人が先に部屋にいてそこに入る主人公というコマみたいな感じで『入る時はどういうふうに入った?』『二人は移動中どんな会話をしてた? あるいは何にもしてなかった?』

こういうのが丸々カットされるのでキャラクターが全く見えてこないんですよね。しかも通常の作品より長い尺かかっているのに分からない。これは致命的で、 つまりキャラクターが生きていると感じることができなかったんです。だから背景にキャラクターを置いただけみたいな奇妙な空間がずっと残ります。別に時間をかけなければキャラクターの解像度を上げることができないわけではないでしょう。その人がその世界に生きていることを考えれば必然的に発生する何かはあるはずです。

 

そして、単純なアニメーションとしての質の低さ。これもまあ割と上の話と共通する部分も多いので深くは話しませんが、見ればわかるクオリティの低さです。映画である以上、話のクオリティは原作次第とは言っても、もう少しそういった映像や音声などのアニメ映画ならではの部分で魅せることも出来たと思いますし、それをしないというのは到底許されることでは無いと思います。端的に言って消費者に対して失礼な気がします。予算とか環境とかそんな話は消費者にとって全く関係の無い話ですから。

 

さて、そういったあれこれを投げ出したからにはさぞストーリーで魅せてくれるのかと思いきやその中身も驚くことに残念なものでした。

パラレルワールドという非常に使い方の難しい設定。まさに諸刃の剣です。本作においては使いこなすことはできていないように思いました。そもそも私としてはですが、キャッチコピー自体が虚言だと思います。と言うのも結末は別段変わっていないように思いました。まあ少し違いますが、キャッチコピーから分かること②の逆に該当すると言えば言えなくもないです。その時点でキャッチコピーが嘘になるのでかなり問題ですが、その上設定に対してやっていることがイマイチ伴っていないと感じました。

そもそもこの作品でやりたかったことをするのにパラレルワールドという話が必要だったのでしょうか。確かにパラレルワールドに付随した話はまあいくつかは出てきますが、私にはこの設定がむしろ話の邪魔をしていたような、単なるストレス要素としてしか機能していなかったような気がします。

結局のところヒロインっぽい人を救うだけであればパラレルワールドなんてものを使う必要は無かったですし、その理屈も見ていて直感的に分かるものでは全くありませんでした。だからこそパラレルワールドである必要があったのか? という疑問が湧くわけです。

 

まとめ

まとめると、

・最終的な解決策はよく分からない

・話も無駄に面倒でストレス

・メッセージ性も感じ取れない

・演技も酷いし映像部分も到底評価できたものでは無い

・キャッチコピーも嘘

という感じです。

まあ何と言うか頑張れという感じもしません。やべえな、という言葉に尽きます。

見る前の諸々が全て繋がったような、納得できたような気持ちになりました。

 

唯一良かったところとしては、試みです。

このキャッチコピー自体はすごく良かったと思いますし、興味も惹かれました。

仮に実現できていれば確実に斬新なアニメ映画となっていたでしょう。

残念ながらできていないので結論としては、やはり私が見た中でワーストワンかもしれません。どちらから見てもいいし、そもそも見る価値があるとは言えないという感想になります。

そんなところで眠いので寝ます。それではまた。